恋の罪

---ネタバレと無駄話が多い---

 

わたしも女の部類なので全て解っていそうなものだが、女については分からない、知らない、謎なことばかりだ。

先日も同世代の同僚Kが昼休みに、「仲のいい女性が言うのよ、この前家の修理の手伝いに来てくれた友達のダンナに自分から迫ってやっちゃったんだって!! どう思う? 日々野さんもやったことある?」

という。

「……いやぁないねえ、あたしは。Kさんは?」

「ないわよーーないない。でもそういう事もあっていいのかしらねえ?」

ということで昼休みの間中、そういう事があっていいのかないのかで話しが尽きることなかった。
けれどこの豊満な肉体の(太めとも言う;)Kさんに、本人が言う通りにそのような経験がないのか。あるいは実はあるのか。あるいはこの映画のセンで言えば風俗やアダルト系の経験がないのか、実はあるのか。

普通に尋ねれば否定されるわけだが、本当はどうなのか。
「ある」ことは証明できても、「ない」ことは証明できない。
相手が否定したものを疑ったところで、それ以上どうしようもない。
「本当の親友」なら打ち明けるのではないか、篤い友情があれば、真実を教えてくれるのではないか。 そんな疑念も同時にわいてくる。

本当はどうなんだろう? この人の、セイっていうか、セックスというかは…… 

と考え出して、眩暈に似た感覚に襲われることが、Kに限らず、けっこうあるのだ。

その後ろ姿、うなじのあたり。性とは縁もゆかりもないような澄ました横顔を、肩越しに見た時。 その不可解性にクラクラしてくることがある。

反対にあれもこれもベラベラ喋るアケスケな女性もいるので、全部の女性に対して感じるわけではないが。
かくいうわたしの否定にしても、彼女はどれくらい信用しただろうか。
「ある」ことは証明できても、「ない」ことは証明できない。そして、「ない」と言ったのは、ふたりの間がさほど親しくない他人だからではないだろうか。という、疑念。

すべてが不可解で、こうなるともう、あけすけに全部「ある」ってことで打ち明け話しでも始まってくれた方が、どれくらい楽しいだろうか? 

けれど、そうはならないだろう。

「ない」にしろ、「ある」にしろ。

★ ★ ★

いずみ(神楽坂恵)と美津子(冨樫真)の関係は、随分ハードなむちゃぶりだらけだけど血の通うあたたかさを感じた。この関係があるから『冷たい熱帯魚』よりは楽に息をして見れた。美津子はいずみに色々なことを教える。たとえば美津子が壇上で朗読した詩『帰途』について「目から出た水と言ってしまったら誰も立ち止まらない。涙は涙だから人が立ち止まる(大意)」と教授する。詩以外にも「愛のあるセックス以外は金を取れ!!」と雄々しく教えてくれたりする。もっとも美津子が「愛のあるセックス」なるものをしている気配は無い。それを指して「城」ならば城のまわりを美津子もいずみもぐるぐる回り続けているばかりで、どれほど対象を崇拝したり恋したりしても行為にはいたらず、恋という言葉と罪という言葉のドレイであり続ける。まったくもって「言葉なんかおぼえるんじゃなかった」とひしひしと思う。いずみは「体としての言葉」を獲得するためかどうか大きな声を張り上げ、回を追うごとに大きくなるソーセージを売る。店長の岩松了といい巨大化するソーセージといいプフと受ける。鏡の前でいずみが売り子の練習するところがかなりの見所だ。

この映画、主立った女優は三名なんだけど、宣伝にも出ていない第四の女優が出てきてインパクト大なのだ(説明ははぶく)。第四の女優の登場によって因果関係が明かされるという、まじめなシナリオ展開になっている。一方水野美紀というお茶の間でも人気の女優さんが出てきて、他の女優ほどハードではないがエロチックなシーンとなり、お茶の間でなじんでいるがゆえのショックを与えてくれる。レビュー欄見たら、水野美紀のヌードにつられ見に行ったあげくお好みの濡れ場ではなかったらしく怒っている人がいた。ほんとにもうあほかっつうの。あなたの都合のいい映画にしてたら浅はかで無難なだけのテレビドラマですよ。

立派な売春婦に成長したいずみが性交の後呟いた「言葉なんかおぼえるんじゃなかった」に、客が「わけわかんね」と馬鹿にする。いずみが二度三度と聞き返すも客は悪びれもせず開き直って詩をバカにする。怒り狂ったいずみが客に掴みかかり殴りかかる。その後バナナの叩き売りでもするが如く性交の叩き売りをするいずみは元気いっぱいだ。とそこへくだんの客の知り合いがやってきて蹴られ殴られ報復を受ける。血だらけになりながらもいずみは満足して笑う。ラストシーンは『帰途』でもあらわされる夕暮れどきだ。こじつけて言えばあの尿には「この世界の夕暮れの ふるえるような夕焼けのひびき」がある…と考えると感涙してしまうのだけど。涙の代わりにオシッコちびるわけにいかないし…。

すっごいネタバレだけど、水野美紀演じる女刑事にかかってくる電話の男は、妄想。あんなに都合のいい時間に都合のいい電話をかけてくる男がこの世にいるわけがない。第一、そう考えなくては最後にゴミ袋を持って走り続ける意味がない。(ひょっとして違うかもだけど、わたしにはそういう事で) だから、この後女刑事が踏み込んでいくかもしれない世界こそが、ワレワレのいる世界なのである。というか、わたしのいる世界なのだと思って、なんかウキウキ♪してみたりする。

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