2010年07月06日

沖縄の自己決定権--地球の涙に虹がかかるまで-- / 喜納昌吉

この本は、「普天間問題は鳩山政権の試金石だ(infoseek内憂外患)」で知った喜納氏(音楽家、民主党の参議院議員)の本。といっても、喜納氏がしゃべった内容を編集部がまとめたインタビュー形式の本なので、ご本人が文章を記述していったものではない。

そのため書き言葉ではなく、あちこちに話が飛んでいる印象があることはあるけども、沖縄に関して知りたいこと、知らしむべきことは網羅した内容になっていると思う。それに、書籍というとどうしてもリアルタイムではなくすでに古くなり始めているという先入観があるけれど、決してそんなことはなく、鳩山政権は終わっているので古い面もあるとはいえ、「機密費」にからんだマスメディアの問題など、リアルタイムな話題を多く含んでいる。

それにしても内容が、地球(というか宇宙までふくむ)規模から、喜納氏が活動してきたイラクや北朝鮮などにおもむいてのグローバルな平和運動から、沖縄の地でのドロドロした利権がらみの話しまで、奥行きが深すぎて、今、これの感想をどっから書いたものか、途方に暮れている。
そんな中、もともとは音楽の人である著者が作詞作曲したヒット曲「ハイサイおじさん」や、「花(すべての人の心に花を)」(の、夏川りみバージョン)やご本人バージョンをYouTubeで聴きながら、(それと思い出してBEGINの島人ぬ宝も沖縄だから)、以前よりもずっと深く、これらの歌の底にあるものを感じることができた気がして、やはり読んでよかったと思う。

にしても、どこからレビュウしたもんか?
ネットで見ると、本書の中の特殊な一文だけが妙に脚光を浴びて言及されている。曰く菅直人「もう沖縄は独立した方がいい」発言というやつだ。確かに、本書のかなり後ろの方に該当箇所はある。が、著者は別段それを怒っているわけでも嘆いているわけでもなく、発言として大変な内容である、としながらも特に問題視もしていない。なにせ最初の方では逆に、小沢一郎に喜納氏の方から「(このままでは)沖縄は独立しますよ」と言っているのである。それに対して小沢氏が「沖縄の人はそんなことを考えているのか?」と驚き、喜納氏が「考えていますよ」と答えるというエピソードが出てくる。

菅直人は基地問題解決のために懸命に内部で戦った経験はあるのだろう。そして結局、日米同盟派に勝てないと思い知った、ということなのだ。
そこらへんの敗北の学習が、強い者にばかり気配りする今度の参院選にもよく出ている。
ただ、総理になった菅直人がやっていないことがある。強い者(この場合日米同盟派)相手にいろんな事を学習したのは、それはそれとして、国民に対しては何も説明していないし、何も考えを主張していない。それじゃあ何のために首相および政治家になったのか? 自分の考えを述べたあげくに失脚するのがそんなに怖いのか…?

沖縄の利権について
当たり前だけど、沖縄の人々は特に聖人君子なわけでも正義のヒーローなわけでもなく、ごく普通に人間であるからして、基地に依存(本書では「寄生」)することで生活が成り立っている面もあるし、県庁、総合事務局、防衛省と、あちこちからやってくるいろんな名目の金に振り回されている現状があると語られる。これらの金の存在が、たとえば文化でいえば、牙を抜かれた口当たりのいいへニャへニャの、つまりは反骨精神のない本土に都合のいい表現ばかりが優遇される。早い話が賄賂である。例の官房機密費からも、大きな場面でカネが出た(と推測される)ことが最後の方書いてある。そんな中、今年1月には名護市長選が行われ、普天間基地移転容認の現職と反対の新人がたたかって、新人の稲嶺氏が当選した、というのは、誰の目にも明らかに基地移転へのノーの意思表示が出た、ということで、喜納氏に言わせれば、わずか1500票の僅差であっても、大きな出来事だった。

それくらい、賄賂の魔の触手が張り巡らされ、そこを打破していくのは難しいということだ。
そういった、複雑怪奇なドロドロ話の一端が「うるの会解散提案へ 会長の喜納氏 普天間「分裂」が要因」という記事を見ても分かるかもしれない。「うるの会」は沖縄県出身の議員の集まりで、沖縄の総意として「県外、国外」を主張していくはずの集まりであるところ、「何も相談せずに『県内』と言ったメンバーが」出てきてしまい、解散になった。その人がどうしてそういうことを言い出したのかというと、それは氏にも断言はできないながら、日米同盟的なるものからの賄賂めいたものが動いた事が考えられる。なにせ、基地建設反対なら味方かというとそうではなく、もっと利権をむさぼれる海岸に建設なら賛成、くらいのも平気でいるのであるから、頭が腹痛だ。

しかし、こういった賄賂系の話しは喜納氏も、「政治の世界に入ったから見えてきた」のであって、政治家ではなく一般人だったら、見えない、分からない話しであったと。

ところで、これらの果ての無いドロドロ話しを語る一方、氏は「すべての武器を楽器に」「すべての人の心に花を」というスローガンを挙げる平和活動家である。その理想の姿は、おおいに共感を呼ぶものである。しかし、いくぶんスピリチュアルがかっているがため、どうも怪しいオジサンにも感じられ、少し警戒してしまう。だからといって、氏のいうことが間違っているわけではないはずだ。いや、よく分からない。それはこれからじっくり考えようと思う。むしろ言うなれば、踊るアホウに見るアホウで、喜納さんといっしょに踊れるかどうか、という選択にかかっているのかもしれない。それでも氏は、決して他人に踊ることを強制しはしない。氏の思想のもっとも光る部分は、誰もみな、「私が中心である」ということかと思う。私にも私が中心、あなたにはあなたが中心。すべてそれぞれみな中心なのであると。

氏が「地球が喜ぶことをすればいい」と語る部分は、理想主義すぎる印象も受けたが、実のところ相当なリアリストでもあることを、付け加えたい。そのひとつはメガフロートの発案であり、尖閣諸島周辺の油田(という、沖縄県民130万人がくっていけるだけの資源)なんだけども、それ以外としては…

沖縄は観光立県として国際観光の看板を挙げながらも、実際の観光客は本土から「しか」!!来ていない、という実態。なぜか? 沖縄には国際空港がない。沖縄の人は海外に行くのに、わざわざ大阪なり羽田に行かねばならない(那覇空港から台湾、中国と行く便はあるが限られている)。

以前、「辺野古は世界有数のダイビングスポットである」と、同僚が言っていたことをわたしもここに書いたが、外国語サイトで「ベストダイビングスポットインザワールド」のように検索しても、出てくるのはよその国ばかりで、辺野古はもちろん沖縄のどこも10位にもかすらない。「へんだなーー、他の海はもっとすごいのかな」と思っていたが、そもそも外国からダイバーが来ていないのだから無理もない。なんという勿体無い話であろうか??!!

それを国際空港を作れば、ダイレクトに海外から観光客がやってこれるのである。
その権利を、その自治権を、そういったことを含む「自己決定権」を、というのが、本書の大事な主張なのだ。
本書は一見、基地に限定された話にも見えるが、戦後70年たらずの基地問題だけではなく、沖縄には400年前に徳川幕府によって属国化された歴史があり、それはいまだ、日本史の中にちゃんと組み込まれているわけではない。坂本龍馬にしても西郷隆盛にしても、沖縄の歴史から見たらヒーローでもなんでもないと。

…でありながら、純粋な沖縄県人がいるのかというと、多くの沖縄県人はもとは九州等の本土(ヤマト)の出であったり、あるいは中国や韓国の血も混ざり、音楽的にいっても「それは純粋な沖縄音楽ではない」などと喜納氏も言われたことがあるほど、純粋な沖縄というのも曖昧なのである。

そう考えると、混沌は何も沖縄に限った話ではない気もするなぁと思う。
それに、「自己決定権」であるけれども、これ、沖縄に先陣を切ってもらって、他の地方自治体でもやれることのはずだ。

そんなこんなで、この本は前向きなビジョンと、ぐったり感の両方をもたらしてくれた。ぐったりの原因は、ドロドロとした「現実」だ。先に挙げた「うるの会」のように、自民党や官僚や日米同盟派が入っていたわけではなくても分裂するのだから、沖縄基地問題の凄みが感じ取れる。であるからこそ、「沖縄」や「米軍基地」、という狭いカテゴリを越えた理念をもたなければ突破できない、はずだ。

本書の中でなるほどなぁと感心したのは、「現実よりも理念がほんのわずかでも勝っていなくてはならない」ってあたりだ。

そしてわたしが個人的に強く主張したいのは、(当たり前といえば当たり前だけど、ぜんぜん当たり前になっていない)賄賂はダメなんだってこと。
お中元とお歳暮を贈りつける風習もダメッ。
その前に人と人がすべきは、言語活動で意志を伝えたり広めたり、感情や思いを理解してもらうこと。
だからといって、説得や説明のうまい人間ばかりが得をするのであってはならない。
うまく話を引き出せないなら、いくら自分の話がうまくても、それはそれでモンダイあり。
お互いの格差、力の差を越えて、可能な限り平等にお互いの力を引き出せるものは、話し合うこと以外に何かあるだろうか?

ともかく、賄賂はせいしんをジワジワと殺す、ほんとーーにイヤな暴力だと、思う。

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にしてもこの本は、今度の選挙どこに投票したものか、という参考になるコトは書いてない。
オザワさんのことも、鳩山さんのことも、菅さんのことも出て来たけれど、オザワさんがどう出るかなど予測できない(そうだ)し、もっぱらアメリカは日本を「コントロール」したいらしいが、そういうのを選挙の遡上に挙げるような政党もいないわけだし、遅れているというか、つまらない話である。

喜納氏は民主党なので、氏を応援するならとりあえず民主党に入れることになるのかもしれないが、それでいいのかどうか、よーわからん部分ではある。今は民主党の党首が、官僚や財界やマスメディアの方向ではなく、有権者の方をキチンと向いて何か言ってくれるのを待つしかない。いかにマスコミが歪んだ報道をするのが常だとしても、言っていることをそのまま放送する仕組みはネット上にあるのだから、ちゃんと伝えよと思えば、伝えられるはずなのだ。

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あと、
選挙といえば、今年の11月に、沖縄知事選が待っている。

参院選などより、こっちのがビッグな選挙になるかもしれない。


posted by sukima at 17:25 | Comment(0) | TrackBack(0) | 普天間基地 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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